アマランサスは強い生育力とすぐれた栄養価を持つことからか、「神の穀物」や「仙人穀」と呼ばれる植物です。この植物は水の不足や高温な環境にもひたすら耐え、茎を伸ばし、葉を広げ、倒れるほどに実をつけます。アマランサスには、タンパク質をはじめとする豊富な栄養素が含まれています。



アマランサスとは?

野菜用と穀物用

「アマランサス」は、ヒユ科ヒユ属の食用とされる栽培種の総称で、日本では「アマランス」または「アマラント」とも呼ばれる一年生草本です。語源は「萎れない」という意味のギリシャ語で、アマランサスは乾燥に強く、痩せた土地でも旺盛に生育することに由来しています。ネパールでは「神の穀物」(ランダナ)と呼ばれ、日本では「仙人穀」とも呼ばれています。

ヒユ属植物は、野生種を含めて60種余りが世界に広く分布しています。栽培種は、種子を目的とする穀物用の「グレインアマランサス」と、茎と葉を利用する野菜用の「ベジタブルアマランサス」に分けられます。穀物用には、「センニンコク」、「ヒモゲイトウ」、「スギモリゲイトウ」があります。野菜として利用されるものには、「アオゲイトウ」や「ハゲイトウ」があり、市販される際には「ヒユナ」または「バイアム」という名称が使われています。中国ではこれを「シェンツァイ」と呼びます。

 

中南米からアジアへ

中南米原産で、栽培の歴史は長く、アステカ文明などを支えた重要な作物とされています。しかし、16世紀にこの地を征服したキリスト教徒のスペイン人は、宗教儀式と結びついていたアマランサスを邪教のシンボルと見なし、栽培を厳しく禁止しました。そのため、栽培が激減し、現在では山の谷間でわずかに栽培されているだけです。

19世紀初頭にインドに伝わり、栽培の歴史は短いながらも、アフガニスタンからカシミール、ネパール、インド、ブータン、中国西南部まで広がりました。特にヒマラヤ山脈の南山麓で多く栽培されています。日本には約150年前にヒモゲイトウが導入され、「仙人穀」または「アカアワ」と呼ばれ、東北地方でわずかに栽培されていました。日本ではアマランサスと呼ぶ際には、一般的に20年前に導入されたセンニンコクの穀粒を指しますが、ヒモゲイトウが「仙人穀」と呼ばれていたために、混同されることがあるそうです。

 

最良の穀物と言われる理由

忘れられていた作物であったアマランサスは、その優れた栄養特性と高い生産力により再評価を受け、今では21世紀の人類の食糧を支える最良の穀物(スーパーグレイン)と呼ばれています。

まず、種子の一般成分を見てみると、種子のタンパク質含量は約15%で、玄米の2倍、小麦の1.5倍も含んでいます。そのタンパク質は必須アミノ酸であるリジンを多く含んでおり、構成アミノ酸バランスが優れています。イネ科穀類の中ではリジン含量が少ないことが問題とされていますが、アマランサスは上記の通り、小麦の2倍、トウモロコシの3倍のリジンを含んでおり、牛乳に匹敵する優れたアミノ酸組成を有しています。そのため、主食としているイネ科穀類にアマランサスを組み合わせることで、アミノ酸組成を改善し、タンパク質としての栄養価を向上させることが可能です。

脂質含有量はコーン油の原料となるトウモロコシよりも高く、約6%です。脂質の大部分は中性脂肪で、脂肪酸組成は必須脂肪酸のリノール酸が約50%、オレイン酸が約25%、パルミチン酸が約20%で、コーン油とほぼ同様の組成です。

特筆すべきは、他の穀類にはほとんど含まれていないスクアレンが脂質中に5〜8%含まれていることです。スクアレンは、体内で大切な働きをするステロイドを合成する前駆物質であり、性ホルモンや強心性配糖体などに関与しています。

 

カルシウムと鉄分が豊富

ミネラルも豊富に含まれており、特にカルシウムと鉄の含有量がイネ科穀類と比較して著しく高いです。カルシウムは玄米の16倍、鉄は約9倍も含まれています。アマランサスは、日本人に不足気味とされるカルシウムと鉄の供給源として重要な役割を果たすことができそうです。

また、アマランサスの穀粒からは、数種類の酵素の阻害作用、菌の増殖を防ぐ抗菌性ペプチド、病原菌に対する抗体の産生を促進する因子、血管病を防ぐコレステロール低下作用、血糖値を下げるインスリン様活性などが報告されています。これらの特性から、アマランサスは機能性食品の素材としても高く評価されているようです。

さらに、食物アレルギーに起因するアトピー性皮膚炎に対する効果も報告されており、抗アレルギー因子はまだ特定されていませんが、かゆみの原因となるヒスタミンの遊離を約50%も抑制することが報告されています。アマランサスは抗ヒスタミン作用に加えて、高い栄養価があり、イネ科穀類ではないことから、食物アレルギー用の代替食としても高く評価されているようです。

 

健康野菜としての茎と葉

野菜として利用されているアマランサスの茎と葉の栄養価を見てみると、茎葉の栄養分はモロヘイヤとほぼ同等のタンパク質とビタミンCを含んでいます。また、カロテンも豊富でビタミンA効力が高く、その栄養特性は優れています。ミネラルも豊富に含まれており、鉄はほうれん草の2.4倍、カルシウムはモロヘイヤの1.5倍以上です。

アマランサスの茎葉は、ほうれん草と同様にシュウ酸ソーダを含んでいるため、えぐ味を感じることがありますが、茹でた後に水にさらすことで、おいしく食べることができるようです。

 

お米と組み合わせると

アマランサスはそのまま精白する必要なく、そのまま食べることができます。アマランサスには、モチ性とウルチ性の2つの品種があり、日本では主にモチ性の品種が広く栽培され、販売されています。

種子のタンパク質消化率は加熱調理によって高まります。これは、加熱調理によってトリプシンインヒビターなどの反栄養因子が活性を失うためです。アマランサスの種子を軽く煎って、米に約一割混ぜて炊飯すると、冷めてももち米を混ぜたご飯のように粘り気があり、美味しさが際立ちます。雑炊やピラフにもおすすめされています。

 

アマランサスのサラダ

アマランサスの種子を鍋で軽く煎り、アマランサス1に対して水1.5と少量の塩を加えて強火で煮ます。沸騰したら弱火にして約10分間煮て、火を止めてから10分間蒸らし、最後にかき混ぜます。冷えた後に、お好みの生野菜や蒸した温野菜と一緒に盛り付け、好みのドレッシングをかけると完成です。

 

アマランサスあえ

アマランサスの種子を軽く煎り、その後すり鉢で半つぶしにします。別のボウルで味噌と適量の水をすり混ぜ、最後に煎ったアマランサスを加えてよく混ぜます。最後に、ほうれん草またはアマランサスの茎葉を加え、全体をよく混ぜて完成です。

 

アマランサスおこし

アマランサスの種子を鍋に蓋をして強火でから煎りします。ポップコーンのように弾けるので、黒糖または蜂蜜を加えてよく絡め、冷やせば完成です。

 

シリアルにも活用

ポップさせた種子をミルクティーに適量加えておやつにします。これはネパールでは定番のメニューとのことです。夏は冷たいミルクに入れて、栄養豊かなコールドシリアルにもなります。熱いうちに塩をかければ、ポップコーンの代わりのおやつや酒のつまみにもなります。

 

パンやクッキーに

軽く煎ったもの、またはポップさせた種子をコーヒーミルなどを使って粉末にします。この粉末は、パンやケーキには小麦粉の1割を、クッキーには2割程度までお好みで混ぜて調理することができます。その他にも、うどんや餃子の皮など、小麦粉を使用する料理に利用することができます。粒のままケーキや菓子のトッピングにも活用できます。

 

野菜として

野菜用のヒユナはジャワホウレンソウとも呼ばれ、その名の通りほうれん草と同じように茹でておひたし、胡麻和え、卵とじ、油炒め、スープなど、幅広く調理できます。殻粒用品種の場合、若干えぐ味があるため、茹でた後に水にさらすことが一般的です。太い茎は皮を剥いて使います。油炒めにすると、茎葉に含まれるカロテンの吸収がより良くなります。

 

様々な食品として

野菜用の品種の種子は、バイアムあるいはヒユナの名称で種苗店で入手でき、食用のアマランサス穀粒は全国の自然食品店や健康食品店で購入できるようです。アマランサスを用いた加工食品には多くの種類があり、各地で蕎麦、うどん、クッキー、せんべい、お茶、味噌などが生産されています。

食物アレルギーの方々は、牛乳、卵、大豆が摂取できないことがありますが、その代わりにアマランサスを用いた子供用のアレルギー代替食品も販売されているようです。

アマランサスの効果

免疫力を高める効果

アマランサスの種子には、玄米の2倍、小麦の1.5倍のタンパク質を含んでいます。タンパク質は体を構成する細胞になるほか、体を細菌やウイルスなどから守る免疫細胞のもとにもなります。免疫細胞が活性化されると、免疫力を高めることにつながります。

 

骨を丈夫にする

アマランサスは、カルシウムや鉄といったミネラルも豊富です。カルシウムは玄米の16倍、鉄は約9倍も含んでいます。カルシウムは強い骨や歯をつくり、体を支える重要な働きがあります。

 

血糖値対策に

アマランサスの穀粒からは、血糖値を下げるインスリン様活性も報告されています。

こんな方におすすめ

免疫力を高めたい人

骨や歯を強くしたい人

血糖値が気になる人

おさらい

中南米原産で、栽培の歴史は長く、アステカ文明などを支えた重要な作物

タンパク質やカルシウム、鉄などが豊富に含まれている

蕎麦、うどん、クッキー、せんべい、お茶、味噌といったアマランサスを用いた加工食品には多くの種類がある


参考文献

・根も葉もあってみになる本(発行所 下野新聞社)


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