玉ねぎは予防医学の観点から特に注目されている野菜です。その有効成分として知られているのは、鼻や目にツンとした刺激を与える香味成分の硫化アリルです。その一種のアリシンは、体内でビタミンB1と結合してアリチアミンに変化し、吸収が高まると言われています。
ビタミンB1は代謝や神経機能の正常な働きを保つために重要であり、不足すると疲労がたまり、食欲不振やイライラの原因になることがあります。また、硫化アリル自体は胃の働きを活発にする作用があり、玉ねぎに含まれるポリフェノールは血液をサラサラにし、LDL(悪玉)コレステロールの上昇を抑えたり、血液凝固を遅らせたりといった効果があります。これにより、動脈硬化の予防や抗がん作用にも注目されています。さらに、玉ねぎは古くから抗菌・消炎・鎮静作用を持つ薬草として広く利用されてきた歴史もあります。
玉ねぎとは?
玉ねぎにはビタミンB群、ビタミンC、食物繊維、カルシウム、カリウム、マグネシウムなどが含まれていますが、栄養価だけを見ると特に目を引く特徴はありません。しかし、玉ねぎには胃の消化液の分泌を活発にし、ビタミンB1の吸収を助けるための硫化アリル(アリシン)が含まれています。
■硫化アリルについて
玉ねぎを切った時に出る刺激臭の正体は硫化アリルです。この物質には血液が固まるのを抑える作用があり、動脈硬化や血栓の予防に役立ちます。また、ビタミンB1の吸収を助け、新陳代謝を活発にする働きもあります。硫化アリルは生で食べた時に効力を発揮しますが、玉ねぎにはケルセチンというポリフェノール成分も含まれており、加熱にも耐性があります。ケルセチンは強い抗酸化作用を持ち、血栓やがんの予防に効果があります。さらに、玉ねぎに含まれる含硫化合物は中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを減らす働きがあります。
■不眠症対策にも
玉ねぎのにおいには血行をよくし、神経をしずめる作用があります。
■保存方法
ネットに入れて風通しのよいところに吊るす。新玉ねぎは冷蔵庫の野菜室に保存する。
■調理との組み合わせ
玉ねぎの有効成分である硫化アリルは、水に溶けやすい性質を持ちます。サラダなどで生のまま食べる時に香りや辛味が強すぎる場合には、水にさらすことで刺激を弱めることができます。ただし、過度に水にさらすと硫化アリルが失われてしまうため、注意が必要です。
また、玉ねぎを切ったり刻んだりした後は、空気に触れさせることで薬効成分が増加するとされています。料理の際は、切った後すぐに使うのではなく、しばらく時間を置いてから使用することをおすすめします。これにより、より多くの有効成分を利用することができます。
玉ねぎの効果
■疲労回復
疲労回復に役立つビタミンB1とアリシンが結合することでアリチアミンとなり、ビタミンB1の吸収を高めます。
■LDL(悪玉)コレステロールを増やさない
玉ねぎには強い抗酸化作用をもったポリフェノールが含まれていて、LDL(悪玉)コレステロールを減らす働きがあります。
■ストレス、冷え性対策
香味成分の硫化アリルには、ストレスや冷え性、不眠などの症状に効果があると言われています。
こんな方におすすめ
●疲労を回復したい人
●血中コレステロールが気になる人
●血流を改善したい人
おさらい
●鼻や目にツンとした刺激の原因は、玉ねぎの香味成分である硫化アリル
●硫化アリルの一種のアリシンは、疲労回復に役立つビタミンB1の吸収を助ける
●抗酸化作用をもったポリフェノールが含まれていて、LDL(悪玉)コレステロールを減らす
・完全図解版 食べ物栄養事典(発行所 株式会社主婦の友社)
・春夏秋冬 おいしいクスリ 旬の野菜の栄養事典(発行所 株式会社エクスナレッジ)