キク科の植物であるステビアは、その葉の抽出物が天然甘味料として広く知られています。しかしそれだけでなく、最近の研究により、ステビアの茎には非常に強力な抗酸化成分や抗ヒスタミン成分が含まれていることが明らかになりました。このことから、人間の健康においてだけでなく、農林業や畜産業などの様々な分野で広範に活用できる可能性が浮かび上がっています。



ステビアとは?

原産国はパラグアイ

ステビアは、南米パラグアイに自生するキク科の宿根多年草です。ステビア属の植物は154種ありますが、なぜかパラグアイに自生するステビアだけが、葉に強い甘みを持っています。そのため、日本の食物図鑑には、「アマハステビア」と記述されているものもあります。

ステビアの原産地は、パラグアイの高温多湿の湖沼地帯である「アマンバイの森」と言われており、ここは作物がよく育ち、豊富な雨にも恵まれています。パラグアイの先住民族であるグァラニ族の間では、ステビアは「聖なる草」として大切にされていました。また、原住民のインディオたちも、このステビアを「甘い草」と呼んで何百年も前から天然の甘味料や薬草として利用しているようです。スペイン人がパラグアイに到来すると、インディオからステビアを知り、お茶や飲み物、食べ物に甘みをつけるために使用するようになりました。そのため、スペイン人たちはこれを「甘いハーブ」と呼んでいました。

 

ステビアの特徴は甘み

ステビアが日本で栽培されるようになったのは、1970年に農林水産省がパラグアイから種子や苗木を手に入れたことが始まりです。人工甘味料のサッカリンやチクロなどの発がん性が問題となっていることから、これらに代わる安全で副作用のない天然甘味料として期待され、日本に導入され、国内各地で広く栽培されるようになりました。

甘味料のステビアは、葉に含まれる甘味成分ステビオサイドを抽出して作られます。ステビオサイドは砂糖の約300倍の甘さがあり、カロリーは砂糖の約90分の1です。カンゾウ(甘草)などの他の天然甘味料よりも、砂糖に近い甘みがあります。白い粉末状をしており、薬効成分は含まれていません。

現在では清涼飲料水、菓子、漬物、健康食品、医薬品などに添加され、「ノンシュガー」、「シュガーレス」、「ステビア入り」などの表示名で各方面で使われています。

 

予想外の発見

栽培農家では、甘味料の原料である葉を出荷した後、茎を捨てていました。ところが、ある農家の方がステビアの茎を堆肥として、たまたま一本のみかんの木の根元に敷き詰めていたところ、色つきや香りが良くなり、糖度が1〜2度上がり、甘いみかんが実るようになったと言います。

その他にも、「メロンが甘くおいしくなった」、「野菜や果物の日持ちが良くなった」、「霜に強くなり、病気にかかりにくい」などの話がステビア生産農家の間で広まっていき、甘味料としてだけでなく、注目されるようになりました。

近年の研究では、ステビアの茎に強い抗酸化力があることがわかっているようです。原産国の南米では、「ステビアの搾り汁は、角質化した皮膚の軟化に効果がある」といった報告もされています。その後、ステビア濃縮液を発酵・熟成させて、腐らない茶褐色の甘い天然100%エキスも製品化されました。

 

広がるステビアの活用方法

開発されたステビア濃縮エキスは、まずは農業や畜産資材として利用され、農業関係では米や果物、野菜などの広範な作物の栽培に使われているようです。ステビアの使用により、土壌微生物やミミズが増え、土地が元気になり、「果物の糖度が上がった」、「ビタミンやミネラルが豊富になった」といった評価とともに、「りんごやナシを包丁で切っても、なかなか変色しない」といった、作物の鮮度維持や日持ちを向上させる効果がステビアにあることがわかったそうです。畜産分野でも、「牛、豚、鶏などの発育が良くなった」、「肉の味や色に関する品質が向上した」といった評価を得ているようです。

 

解明される効能

大学や研究機関でも様々な試験が行われ、ステビアの茎にはガンなど各種の病気や老化の原因となる活性酸素を抑制する抗酸化作用が、緑茶の5倍もあると報告されているようです。さらに、食中毒菌を殺菌する効果も確認されています。

また、ステビア抽出液は、胃潰瘍やアトピー性皮膚炎、花粉症、喘息などのアレルギーの原因となるヒスタミンを解毒することが報告されており、ヒスタミン解毒天然薬の可能性も秘められているようです。その他にも、日焼け、化粧かぶれ、しみ、そばかす、老人性色素斑の改善や、飲用による血糖値の正常化の症例も報告されています。

 

楽しみ方はいろいろ

ステビアの原産国であるパラグアイでは、ステビアをハーブティーの一種として楽しんでいます。乾燥させた葉や茎を煎じたり、ティーポットに入れたりして、お茶代わりに飲むことが一般的です。味はとにかく甘いので、最初は少量から試したほうが良さそうです。

また、他のハーブティーの甘味づけにステビアを使用する方法もあります。ハーブティーは一種類でも身体に良いですが、ブレンドすることで、より一層の効果や香り、風味を楽しむことができます。少量のステビアを加えることで、適度な甘味が得られ、さらに低カロリーなのが魅力です。

 

ステビアハーブティーの入れ方

陶器または耐熱ポットに乾燥させたステビアか、あるいは他の種類のハーブとともに好みの量を入れ、熱湯を注ぎます。1〜3分後、香がよくたっている時が入れ時になります。

 

乾燥ステビアの天ぷら

5〜6枚の葉をまとめて衣につけて揚げます。甘いので特に子供にも好評です。

 

粉末にして、クッキーやパンに

食物繊維も活かすことができます。乾燥させたステビアの茎や葉を、コーヒーミルなどで製粉し、小麦粉に適量(甘いので多くても1割程度)を混ぜて使います。

 

葉や茎の煮汁を調味料に

煮物料理や漬物、キムチ、ピクルス作りに使う人もいるようです。煮物は甘いですが、低カロリーなので糖尿病が気になる人にもおすすめです。

 

お風呂に入れると

乾燥させたステビアの葉や茎を細かく切ったり、粉末にしたりして、布の袋や茶殻が出ない紙パックなどに入れて、お風呂に入れてみましょう。(標準の浴槽で20g程度)すると体がポカポカになって湯冷めしにくく、肌はスベスベになります。

ステビアの効果

老化を防ぐ

ステビアの茎には、老化の起因物質である活性酸素を抑制する抗酸化作用が、緑茶の5倍も含まれていると言われています。

 

甘いけど、低カロリー

砂糖の約300倍の甘さがありますが、カロリーは砂糖の約90/1のため、ダイエット中の人におすすめです。

こんな方におすすめ

老化が気になる人

生活習慣病が気になる人

ダイエット中の人

おさらい

ステビアの葉の抽出物は、天然甘味料として知られている

砂糖の約300倍の甘さがあるが、カロリーは砂糖の約90/1と低い

ステビアの茎に強い抗酸化力があることも報告されている


参考文献

・根も葉もあってみになる本(発行所 下野新聞社)


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