貧血というと、一般的には鉄不足が思い浮かびます。これは赤血球内のヘモグロビン量が鉄不足によって減少するためです。しかし、鉄とヘモグロビンを結びつけるためには銅も必要です。そのため、鉄が十分に摂取されていても、銅が不足していると貧血の状態に陥る可能性があります。さらに、銅を含む酵素はコラーゲンの生成にも関与し、骨や血管壁の強化に働きます。また、メラニン色素の生成に銅が関与しているので、銅の不足は毛髪にも影響します。
銅とは?
銅は牡蠣やイカ、タコなどの魚介類、レバー、ナッツ類などに多く含まれています。体内には約80mgの銅が存在し、その約半分が骨や筋肉に、1割が肝臓中に存在します。銅は赤血球中のヘモグロビン合成において鉄を利用可能な形に変える役割を果たします。鉄は銅の働きがないと適切にヘモグロビンを合成することができず、その結果として貧血が起こる可能性があります。
さらに、銅は体内の多くの酵素の構成要素として機能しています。特に活性酵素を分解する酵素(スーパーオキシドジスムターゼ/SOD)やコラーゲンの生成に関与する酵素、免疫細胞のエネルギー産生に関わる酵素(チトクロムCオキシダーゼ)など、さまざまな形で銅が利用されています。
銅はメラニン色素の生成においても重要な役割を果たしており、銅の不足は髪や皮膚の色が抜けたり、髪が縮れたりするなどの問題を引き起こす可能性があります。さらに、銅の不足はコラーゲンの生成にも影響を及ぼし、骨粗鬆症や動脈硬化などが起こりやすくなります。通常の食事においては銅の欠乏症の心配はほとんどありません。
ただし、銅鍋や銅製の容器に酢の物などの酸性食品を調理したり保存すると、銅が食品中に溶け出す可能性があるため、注意が必要です。
銅の効果
■貧血予防
銅は、赤血球中のヘモグロビン合成において鉄を利用できるようにする役割があります。
■活性酸素を除去する
血液中の銅は赤血球中にも存在します。赤血球にある銅の多くは活性酸素を除去する酵素であるSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)の中に存在します。この酵素は、過酸化脂質の生成を抑制し、それによって動脈硬化や糖尿病のリスクを低下させる効果があります。
■骨や毛髪をつくるのを助ける
骨や血管壁を作るコラーゲンの生成に働く酵素、毛髪などのメラニン色素を作るのに働く酵素としても役立ちます。
銅が摂れる食べ物
牛レバー 5.30mg
ホタルイカ 3.42mg
スルメイカ 0.29mg
サクラエビ 0.90mg
牡蠣(養殖) 1.04mg
大豆(国産黄大豆・乾) 1.07mg
カシューナッツ(フライ・味付け) 1.89mg
ピュアココア 3.80mg
イイダコ 2.96mg
※可食部100gあたり
※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より
こんな方におすすめ
●貧血が気になる人
●成長期の子ども
●骨粗鬆症が気になる人
おさらい
●鉄が十分に摂取されていても、銅が不足しているとヘモグロビンがうまく合成されず貧血になる可能性がある
●銅は赤血球の活性酸素を除去する酵素(SOD)にも含まれ、動脈硬化や糖尿病のリスクを低下させる
●銅を含む酵素がコラーゲンの生成に働き、骨や血管壁を強くする
・完全図解版 食べ物栄養事典(発行所 株式会社主婦の友社)
・正しく知れば体が変わる!栄養素の摂り方便利帳(発行所 株式会社PHP研究所)
・NHK出版 健やかな毎日のための栄養大全(発行所 NHK出版)
・食品成分最新ガイド 栄養素の通になる第2版(発行所 女子栄養大学出版部)