リンは体内に豊富に含まれ、カルシウムと共に骨や歯を構成する主成分となります。加工食品の食品添加物としての使用が増え、過剰摂取が問題視されています。リンの摂取比率が高いとカルシウム吸収率が減少し、カルシウム不足につながります。リンは細胞膜の構成やエネルギー代謝にも関与し、不足すると骨軟化症や発育不全のリスクがあります。一方、過剰摂取は副甲状腺機能の亢進や骨代謝障害を引き起こす可能性があります。腎臓病や骨粗鬆症の患者はリン摂取を制限する必要があります。



リンとは?

リンはカルシウムに次いで体内に多く存在し、体重の約1%を占めます。80〜85%はカルシウムと結合してリン酸カルシウムを形成し、骨や歯の主成分となります。しかし、最近では加工食品に食品添加物として多く使用されるため、過剰摂取の問題が摂取不足よりも深刻です。特にレトルト食品や加工食品、外食が多い人は過剰摂取のリスクが高まります。

 

リンはカルシウムの吸収に大きな影響を与えます。理想的にはリンとカルシウムを1:1の割合で摂取することが望ましいです。しかし、カルシウムに対するリンの摂取比率が高くなると、カルシウムの吸収率が低下します。さらに、過剰なリンの存在により、骨に貯蔵されていたカルシウムが血液中に放出されます。日本人は元々カルシウム不足の傾向にあるため、骨に蓄えられたカルシウムが減少し、カルシウム不足がより進行する可能性があります。

 

リンは骨や歯の主成分としてカルシウムと共に働きます。また、リン脂質として細胞膜を構成し、核酸やリンタンパク質などの細胞の構成成分しても重要です。糖質、脂質、タンパク質の代謝に関与し、補酵素としてエネルギー代謝を促進し、ATPやクレアチンリン酸としてエネルギーを貯蔵します。体液中のリン酸塩はpHや浸透圧の調節に関与し、脳や神経、筋肉の正常な機能を維持します。

リンの不足は骨軟化症や発育不全のリスクを引き起こし、新陳代謝が低下し、筋肉の衰えや疲労感が現れます。重度の不足ではてんかんも発生する可能性があります。

一方、過剰摂取はカルシウムの吸収や排泄に影響を及ぼすだけでなく、副甲状腺機能亢進や骨代謝障害のリスクがあります。腎臓の機能が低下している人や骨粗鬆症患者は、リン摂取を制限する必要があります。リンの過剰摂取には注意が必要です。

 

食べ方のポイント

リンは食品添加物として多くの加工食品に使用されていることから、過剰摂取の懸念があります。理想的にはリンとカルシウムを1:1の割合で摂取することが望ましいため、牛乳やチーズなどのようにリンとカルシウムをバランスよく含む食品を摂ることがおすすめです。

リンの効果

骨や歯をつくる

体内のリンの約85%が骨や歯の原料となっています。カルシウムと結合して、骨の硬度を保つ作用があります。

 

エネルギーをつくる

エネルギー代謝に関わる酵素などの構成成分です。エネルギーの運搬や貯蔵、神経や筋肉の機能を正常に保つなどの、生命維持活動に大切な役割をしています。

リンが摂れる食べ物

スルメ 1100mg

うるめいわし 290mg

ロースハム 280mg

しらす干し(半乾燥品) 860mg

プロセスチーズ 730mg

※可食部100gあたり

※日本食品標準成分表2020年版(八訂)より

こんな方におすすめ

骨や歯を強くしたい人

筋肉の調子を整えたい人

疲労を感じている人

おさらい

加工食品の食品添加物として多用されるため、摂取不足よりも過剰摂取が心配される

カルシウムと一緒に骨や歯をつくる主成分となる

エネルギー代謝に関わる酵素などの構成成分になり、生命活動の維持に働く


参考文献

・完全図解版 食べ物栄養事典(発行所 株式会社主婦の友社)

・正しく知れば体が変わる!栄養素の摂り方便利帳(発行所 株式会社PHP研究所)

・NHK出版 健やかな毎日のための栄養大全(発行所 NHK出版)

・食品成分最新ガイド 栄養素の通になる第2版(発行所 女子栄養大学出版部)


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