ヒエは、古代より日本で栽培されていた穀物で、原産地については中国とする説や、日本原産とする説があります。アワと並び、イネより早く常食されていたとされ、五穀の一つに数えられます。環境への適応力が高く、低温や乾燥にも強いため、かつては救荒作物として重宝されました。栄養面では、玄穀に玄米の約2倍のビタミンB1を含み、精白後でも多くの栄養を保ちます。白米よりもカルシウムやリン、鉄分、食物繊維が豊富で、非常に栄養価の高い穀物です。
ヒエ(稗)とは?
ヒエはイネ科キビ亜科に属する一年生草本で、原産地はインドとする説がありますが、日本のヒエはインドのものとは異なり、中国原産で紀元前5世紀ごろに渡来したと考えられています。一方で、日本原産とする説も存在します。アワと並び、イネよりも早く栽培されていた最も古い穀物の一つと推定されており、五穀の一つにも数えられ、イネの渡来以前から常食されていたと考えられています。
ヒエは環境への適応性が高く、栽培可能な地域が広いのが特徴です。低温や過湿、乾燥にも強く、種子は長期保存に耐えるため、かつては救荒作物としても重要視されてきました。
栄養価が非常に高いことでも知られ、特に玄穀は玄米の約2倍のビタミンB1を含みます。精白したヒエでもビタミンB1含有量は高く、米飯などのビタミンB1補給源としても優れています。ただし、精白方法によってビタミンB1の残存率に差があり、「白蒸し法>黒蒸し法>白干し法」の順で高くなります。
さらに、ヒエにはタンパク質や脂質、ミネラル、食物繊維も豊富に含まれています。たとえば、精白ヒエは白米に比べてカルシウムとリンが約2倍、鉄分が約3倍、食物繊維が約4倍多く含まれており、栄養的に白米を上回る点が多くあります。
ヒエ(稗)の効果
■エネルギーをつくるのを助ける
米やパン、麺類の糖質を分解してエネルギーに変換する際には、ヒエに含まれるビタミンB1が酵素の働きを助けます。
運動をする人は、エネルギーの需要が高いため、ビタミンB1もより多く必要とされます。
また、脳にもエネルギーが必要です。エネルギー不足は集中力の低下につながる可能性があります。
■貧血予防に
鉄の摂取が不十分な場合、貯蔵鉄が減少し、潜在的な鉄欠乏状態になります。このような状態では、気付かずに貧血の一歩手前まで進行していることもあります。若年女性の約3分の1から半数が潜在的な鉄欠乏状態にあると言われています。ヒエには鉄分が多く含まれているため、貧血予防にも効果が期待されます。
■腸内環境を整える効果
ヒエに含まれる食物繊維は、腸内に溜まった不要な老廃物や有害物質を吸着し、体外へ排出する働きがあります。また、腸内の善玉菌であるビフィズス菌や乳酸菌を増やす働きもあるため、腸内細菌のバランスが良くなり、腸内環境の改善に役立ちます。
腸内環境が整うことで、便秘の予防や改善にも効果が期待できます。
こんな方におすすめ
●運動習慣のある人
●貧血が気になる人
●便秘で悩んでいる人
おさらい
●アワと並び、イネより早く常食されていたとされ、五穀の一つに数えらる
●環境への適応力が高く、低温や乾燥にも強いため、かつては救荒作物として重宝された
●玄穀に玄米の約2倍のビタミンB1を含み、カルシウム、リン、鉄分、食物繊維が豊富
・完全図解版 食べ物栄養事典(発行所 株式会社主婦の友社)
・実用版オールカラー 食品図鑑(発行所 女子栄養大学出版部)
・新特産シリーズ 雑穀—11種の栽培・加工・利用—(発行所 社団法人 農山漁村文化協会)